実在する町屋カフェ

2月11日の地元紙「北國新聞」の文化欄にて、角川文庫の「相続レストラン」が紹介されていた。その中で、「東山1丁目に実在する町屋カフェくわじまをモデルにしたシーンも描かれる」と案内されている。小説を読まれた方は、ぜひご来店ください。
では、先日も紹介したが、小説の一部を作者の城山さんご了解のもと再録する。ぜひご購入され、じっくりお読みください。
『車一台がやっと通れるくらいの細い道をしばらく進む 。茶屋街の喧騒が噓のように静かになった 。飲食店や土産物屋がなくなり 、住宅が軒を連ねている 。』
『目の前にあるのは 、周囲の建物よりひときわ古い平屋の町屋だった 。街灯に照らされて 、壁の色がほんのり赤く浮き上がっている 。紅殻色と呼ばれる赤紫の壁だ。』
『低い門をくぐると箱庭の一角に屋根を越えるほどの赤松が伸びていた 。玄関のブザ ーを押すと 、すぐに戸が開いて、長身の男の胴体が見えた。鴨居が低いせいで顔までは見えない。』
『「あ 、これ 」ハナがしゃがみこんだ 。その視線は 、ナイロン紐で縛ったガロという古い雑誌の束をとらえている。「紐を解いてもいいですか 」圭吾の了解を得る前から、ハナは紐を解きにかかる 。 「おっ 、二十年分はありますね 」 「父のです 。かなり古い雑誌だったので近いうちに捨てようかと 」 「だめですよ。これ全部だと最低でも四十万円の価値はありますよ 」 「本当ですか ! 」 「有名漫画家の読み切り漫画で単行本化しなかったものなんかが掲載されていれば 、価格はもっと上がるらしいです 。それだと一冊でも一万円以上はしますから 」』
-引用元『相続レストラン』城山真一(角川文庫)
https://www.kadokawa.co.jp/product/321903000367/