「月夜の東山界隈は」

8月26日、カフェを閉めた後、徒歩2分の宇多須神社に。泉鏡花「月夜遊女」の舞いを観る。ご近所にお住いの舞踏家の千佳さんたちの企画だ。東山遊郭の遊女たちの妖艶かつ幻想的な踊りは、浅野川への祈りにつながっていく。時空を超えたような気分での帰途、寿経寺の前に灯りがついている。いつもは格子戸が閉められているが、今晩は、地蔵さまのお顔がはっきり拝める。安政5年(1858)、飢饉となり、庶民が苦しさのあまり卯辰山に上り、城に向かって老若男女2000人が大声で直訴したところ、代表の七人が捕らえられ命を奪われた。その七人の供養のため、稲穂を抱いた七体の地蔵の蔵が建てられ、「七稲地蔵」と呼ばれ今日に至っている。東山廓の遊女と稲穂を抱く七人の地蔵さまの魂に祈りを捧げた夜だった。

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