氷室(ひむろ)

7月1日は、特別に作った氷室饅頭を食べて、一家の健康を喜び合うならわしがある。
ふっくらと蒸した赤、青、白、三色の饅頭は、初夏の爽やかな空気の満ちる早朝の街に配られて、この日いちにち町は饅頭がさわぐ。家々のお茶菓子にも、事務机にも、大工さんの小昼にも、この日には饅頭が必ず出される。
この氷室は陰暦6月1日で、加賀藩では江戸の将軍家へ早駕籠で貯蔵した雪氷を献上した日である。この氷が無事に届くよう饅頭を供えて神社に祈願され、町民たちもこれにならい、氷の代わりに氷室びらき饅頭を食べた。この行事はこうして400余年伝えられ、庶民の暮らしに溶け込んだ。金沢の夏のはしりはいわば、氷室の日ともいえる。(井上雪「金沢の風習」北國新聞社参照)

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